災害対策は平時の準備が重要です。私はそのための専門的な研究を東京大学にて行っております。
8月上旬には、首都圏の降灰対策のため世界でもまれな「火山と都市が同居する鹿児島市」の降灰対策と桜島噴火の研究に赴きました。文献による既往研究もほぼ完了しているため視察が重要になります。9月上旬には、日本初の津波避難複合施設を視察しました。
国土交通省桜島砂防センター
川﨑所長による桜島噴火の解説と現地案内をして頂いた。桜島では、火山が毎年に頻繁に起こっているが被害は報告されていない。巨大噴火は大正噴火以降110年起こっていない。つまり、通常噴火はその程度の規模なのである。大正噴火では、いまだに火山灰に埋まった鳥居や島であった桜島と大隅半島が溶岩で陸続きなったことからも桁違いな規模だと理解できる。桜島には火山灰が積もるとその火山灰が雨で一気に崩落し土石流になることがパターン化されていて、その対策のために砂防ダムなど河川の整備を行っている。噴火を想定して冨士山においても同様の対策が計画されているが、桜島はその先駆的存在でありデータが豊冨でその知見は非常に有益であった。
鹿児島市役所
鹿児島市では、火山災害研究者の井口正人京都大学名誉教授が火山防災専門官として6月に就任され火山対策が強化された。私の降灰対策に関する知見を確認する意味でも、鹿児島市の担当者と井口先生と有意義なディスカッションが出来た。
成果の一つとして、東京都は火山灰の粒子の細かさを問題として対策しているが、鹿児島市では、量が重要だと捉えている点であった。桜島では近年の大きな噴火と言っても0.2ミリ程度の降灰である。(0.2ミリでも道路の白線は見えないレベル)。それにも拘わらず、ロードスイーパーも特注品を用意して清掃している。一方で、東京都に予想される降灰の粒子が細かいため普通のロードスイーパーで充分と捉えている。これは大きな間違いではないかと視察を通して考えるに至る。
その他、この紙面では書ききれないほどの成果を得た。本視察によって首都圏の降灰対策の大きな成果が得られたと自負している。実際、埼玉県では私の研究結果を活かした対策がこれまでも行われている(浄水施設の覆蓋化の推進など)。
津波避難複合施設を視察
東大の指導教官である加藤孝明教授が伊豆市土肥松原公園内に監修された「テラッセ オレンジ トイ」を加藤教授の案内で視察する。
この施設は海で遊ぶ観光客や地域住民を津波の脅威から守る「避難施設」と、平常時には遊び、くつろぎ、交流できる「観光施設」を兼ね備えた全国初の津波避難複合施設である。南海トラフ地震の津波が土肥海岸の場合6分で到達予想されていて、こうした津波タワーが非常に必要となる。しかし、松原を一部伐採することに反対する住民などとの対話が必要になり、完成まで4年の年月が必要であった。だが、完成すると土肥の象徴的な存在になるばかりか、土肥温泉の旅館ホテルの経営の救世主になる可能性すら秘めていることが判った。日本初、というと驚くかもしれないが、まさに「コロンブスの卵」であり、こうした防災と日常が共存する社会が理想である。「防災『も』まちづくり」(「と」ではない)なのである。