2025
JR東日本大宮支社と川口市は、川口駅における鉄道輸送力の強化や駅周辺の利便性向上を通じて、地域の発展と関係人口の拡大を目指すため、「川口駅上野東京ラインホーム及び自由通路等整備に関する基本協定」を2025年4月締結しました。その最大の理由は、京浜東北線不通時の代替輸送手段の確保とされています。しかし、現時点の試算でも約450億円もの税金が投入される予定であり、完成は2040年と見込まれているため、先行きが不透明な事業です。

川口駅は確かに市内最大の乗降客数を誇ります(1日当たりの乗降客数は川口駅:約14万2,708人(2022年度)2位の西川口駅:約11万8,124人(2019年度))が、川口市の最南端に位置しており、多くの市民にとって利用しにくい駅でもあります。こうした場所に巨額の税金を投じることに、果たして意味があるのでしょうか。
確かに、都市のリスク管理として代替輸送網の強化は重要です。しかし、その方法として駅舎の増設が本当に必要なのでしょうか。しかも、満員状態が続く上野東京ラインに、川口駅から快適に乗車できる状況が実現できるとも考えにくいのです。
私は、今こそ発想を転換し、六間道路にLRT的なBRT(バス高速輸送)を導入する構想を真剣に検討すべきだと考えます。
JR川口駅と埼玉高速鉄道・川口元郷駅(1日当たりの乗降客数は約1万8,741人(2022年度))を結ぶ直線道路(六間道路)では現在、拡幅整備が進められています。

この大きな変化を単なる「道路拡幅」で終わらせず、「未来志向のまちづくり」へとつなげる絶好の機会です。
川口駅と川口元郷駅の間はわずか約1.5km。この間を専用レーンを持つBRTが5分間隔で運行すれば、鉄道に匹敵する定時性・速達性を10数億円という低コストで実現できます。
BRTとは、単なるバス輸送ではありません。専用レーンや信号優先制御により定時運行を可能とし、特別仕様の車両によって乗客に上質な移動体験を提供する、次世代型公共交通です。

さらに将来、需要が高まればこのBRTルートをそのままLRT(次世代型路面電車)へと発展させる道も開かれています。
六間道路に専用レーンを設け、連節バスを5分間隔で運行すれば、片道1時間あたり1,500人、往復で3,000人超の輸送能力を確保できます。これは朝夕のピーク時でも十分に対応でき、将来の需要増にも柔軟に対応できるスケーラビリティを備えています。
設置にかかるコストも現実的です。専用レーン整備、停留所新設、信号制御、連節バス導入まで含めても概算12~13億円。
国の補助金を活用すれば、川口市の実質負担は4~5億円台に抑えられる可能性があり、LRT建設の1/10以下、地下鉄建設の1/50以下という極めて高い費用対効果が見込めます。
一部では「バスによるピストン輸送だけで十分」との意見もありますが、現実にはバスだけでは輸送力と定時性に限界があります。
鉄道とバス、両方の強みを組み合わせた多層的な輸送ネットワークこそが、ウォーカブルシティ、そして真の都市レジリエンスを支えると私は考えます。
都市の未来は、「一か所に負担を押し付ける」のではなく、「全体最適のネットワーク」を築くことで開かれます。
巨額のコストを投じて駅舎を新設するよりも、六道路線にBRTを導入し、川口元郷駅を活かすことで、川口全体の交通力を底上げすべきです。
川口市は、東京に最も近い本格的な政令指定都市を目指しています。
その玄関口のあり方は、単なる交通の問題にとどまらず、「都市の格」を問うテーマです。
未来志向の選択肢――それが、BRTであり、次世代に誇れる川口の姿だと、私は確信しています。
