【政策コラム】備蓄米制度の限界と再構築

2025

「あるのに届かない」を終わらせるために国が取り組むべき制度見直しの方向性

日本の食糧安全保障と災害対策の柱の一つである「備蓄米制度」。本来は、自然災害や国際的な食料供給リスクに備え、国民の命と暮らしを守るための制度です。しかし、近年のコメ不足の放出では、「備蓄米があるのに届かない」「供給に時間がかかる」といった声が多く聞かれ、その実効性が問われています。

この制度は、農業政策と災害対策という二つの政策領域の間に位置しており、しばしば“誰のための備蓄か”という根本的な問いを生じさせます。とりわけ問題となっているのが、「政府が備蓄した米をJAなどが買い取り、一般流通に回す」という現行の運用です。これでは、コメ不足も含め災害発生時に政府が即応的に現物支援する機動力が失われ、自治体が求めても手続きや在庫状況によって供給が遅れる事例が後を絶ちません。

議員として以下の3つのアプローチが求められると考えます。

(1)実態の把握とエビデンス収集

まず、現場の課題を可視化する必要があります。備蓄米の災害時の流通経路、JAとの契約構造、自治体との供給協定の有無、現場での配布に至るまでの所要日数など、具体的な実態調査が求められます。
これは衆参の農林水産委員会・災害対策特別委員会などでの質問や、参考人招致、自治体ヒアリング、被災現場視察によって裏付けることが可能です。

(2)制度の理念と目的の明確化

現在の備蓄米制度は、「平常時の需給調整・価格安定」と「非常時の命を守る供給体制」という異なる目的を抱えています。
本来であれば、災害・非常時に迅速に供給される「政府直轄の緊急備蓄枠」を制度上明確に設け、JA流通とは切り分けた管理体系を構築するべきです。

そのためには、食糧法または農業基本法等の関連法に基づく省令・運用指針の見直し、あるいは新たな「災害対応型備蓄制度」の立法化も視野に入れるべきです。

(3)提言から法改正へ:国会内外の連携

課題を明確にした上で、次のステップは政策提言・法案化です。超党派の議員連盟や農政改革を扱う議員グループと連携し、内閣府・農水省・防災担当省庁を巻き込んだ政策協議を行う必要があります。
あわせて、自治体の意見や、実際に災害支援活動を担うNPO・赤十字・自衛隊などとの意見交換を通じて、実効性のある設計を追求します。

それには、地方議会ではなく国会での質疑や附帯決議、議員立法、あるいは予算要求を通じた制度改善の働きかけが必要となります。

おわりに

食料安全保障は国家の根幹です。そして、災害時に誰一人飢えさせない体制は、政治の責任で保障されるべきものです。
「あるのに届かない」備蓄米制度を、「あるから守れる」制度へ。現場と制度のズレを正し、危機に強い国をつくるため、政治の側から見直しを進めてまいります。

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