埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線延伸に関する考察

2025

*1

はじめに

埼玉高速鉄道延伸計画が以前より持ち上がっている。しかし、実現には多くの課題がある。その課題を整理し、実現に向けた提言としたい。

1、埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線延伸の諸問題

  1. 鉄道延伸に伴う沿線開発
  2. 沿線の人口増加
  3. 東武アーバンパークラインへの接続
  4. 沿線開発+快速運転でしかB/Cが1を超えない
  5. 快速運転を既存の路線で出来るのか
  6. 既存の各駅の拡幅の難しさ
  7. 埼玉高速鉄道線・南北線の混雑増
  8. コロナ後の社会変化への対応

2、沿線開発+快速運転でしかB/Cが1を超えない

快速運転だとB/Cが1を超得る理由が明示されていないが*2 、岩槻駅から都内方面へ地下鉄を利用する人を加味してのことだと思う。しかし、快速運転では、下図*3にあるように同一本数ケースでの快速である。先発列車を追い抜く最大本数ケースは、途中駅の鳩ヶ谷駅において追い越し施設を設置する大規模工事が必要であり、かつ、本数増加による経費増大をデメリットとして挙げている。

加えて、最大本数で埼玉スタジアム線と直通運転の東京メトロ南北線が両方快速にする案は、需要が最も増えるが、鳩ヶ谷駅と駒込駅に追い越し施設を設置する必要があるため東京メトロとも協議が必要だとしている。

ところで、この埼玉スタジアム線・南北線は東京目黒線・相鉄新横浜線(2023年3月18日開業)・相鉄線へと将来は続く長距離路線である。また、南北線は白金高輪駅から品川駅に延伸し、リニア中央新幹線・新幹線へのアクセスも優れた、将来性のある路線である。

下図にある計画にある同一本数の快速運転は、少なくとも埼玉スタジアム線区間は最大本数の快速運転にしなければ、意味のない計画であると考察する。

出典 地下鉄7号線(埼玉高速鉄道線)延伸協議会 報告書
(出典 地下鉄7号線(埼玉高速鉄道線)延伸協議会 報告書)

その理由として、埼玉スタジアム線の浦和美園・岩槻駅沿線の人口が増えれば、鉄道の増便をすることになる。そうなれば、前を走る列車を追い抜く快速電車でなければ、そもそも快速運転が出来るダイヤグラムは組むことが出来ない。

他路線を比較してみると、線内で追い抜きも可能な東京メトロ東西線や副都心線では朝ラッシュ時間帯にも頻繁に運転されているが、都営新宿線では、急行の運行は日中に限られている。都営浅草線ではエアポート快特が通過駅のある列車であるが、押上駅以外で同列車の運行区間内に追い越し施設(待避線)がないことから、途中での追い抜きは行われていない。

出典 地下鉄7号線(埼玉高速鉄道線)延伸協議会 報告書
(出典 地下鉄7号線(埼玉高速鉄道線)延伸協議会 報告書)

3、快速運転を前提に地域開発のシミュレーション

埼玉高速鉄道(株) 供給側鉄道利用者 需要側
短期追い越し施設なし 同一本数による快速運転 安価で短期的にはB/Cが1以上鉄道利用者が少ないためダイヤグラムに余裕があり不便はない
長期鉄道利用者増に対応できない 最大本数による快速運転へは追い越し施設が必要なため増設したい B/Cが伸び悩む周辺開発に力を入れるため必然的に、鉄道利用者が多くなる。 追い越しがない快速運転に意味なく不満
→最大本数ケースが解決策

短期的には、同一本数ケースで行う方が、安価で採算性も18年でとれると計算される。しかし、順調に沿線開発が行われれば、人口は予想以上に増えるであろう。加えて、沿線開発で人口増をがなればB/Cが1を超えない。人口が増えれば増えるほど採算が取れるのは当然である。しかし、この同一本数ケースでは人口増のあまた打ちが起こると考えられる。

(出典 地下鉄7号線(埼玉高速鉄道線)延伸協議会 報告書)

上図は、浦和美園地区の人口増加が特に示されている。浦和美園地区は岩槻駅と違い、交通の代替手段がないため埼玉スタジアム線しか利用できない。埼玉スタジアム線延伸には、地域の人口増を見越して採算を考えているが、鉄道利用者が増えれば当然に増便が求められる。講義でも、さいたま市のコミュニティバスの事例があったが、さいたま市緑区・岩槻区の路線はまさにこの埼玉スタジアム線延伸区間にある。沿線開発による人口を乗客数にカウントするだけでなく、計算されたコミュニティバスがあることは既に広域的に利用客を駅に集められる土壌があることも意味するのではないだろうか。こうした客は人口分布図だけでは見えて来ないと言える。

3、結語

このような多くの利用客数を考えると、前方を走る列車を追い越せる快速電車でなければ、そもそも快速電車が成立しない。では、仮に需要が高まったところで、ホーム増設(追い越し施設)を鳩ヶ谷駅に設置しようとしても、工期が掛かり、利用客に不満が出るであろう。採算が18年で考えているのなら、追い越し施設の設置も同時並行で行っても問題はないと思われる。かつ、埼玉高速鉄道は埼玉県と川口市など沿線自治体の共同出資による第三セクターである。川口市が設置に投資することを求めても良い。実際川口市は、JR川口駅に上野東京ラインを停車させるために駅建設に400億円の拠出を決定して計画している。

また、鳩ヶ谷駅は、最寄りのSKIP CITYにNHK第二スタジオが建設中である。第二スタジオとは、単なる支局ではなく、NHK渋谷と同等の機能を有したNHK初のサブスタジオである。発展が目覚ましい駅のため、先行投資という意味からも設置工事は、延伸と同時にするべきである。

なお、富士山の噴火を想定して内閣府が発表した「大規模噴火時の広域降灰対策について―首都圏における降灰の影響と対策―~富士山噴火をモデルケースに~(報告)(令和2年4月7日公表)」において、鉄道が降灰により不通になった際の埼玉県の県都浦和とJR大宮駅への鉄道最短駅として鳩ケ谷駅が挙げられている*4。このように非常時においても重視されている鳩ケ谷駅のホーム増設は有意義と言える。

埼玉スタジアム線が直通運転している東京メトロ南北線はリニア中央新幹線品川駅に直結し、直通の東急目黒線は日吉駅から相鉄新横浜線(2023年3月18日開業済み)で新幹線新横浜駅へ、湘南(いづみ野線)・海老名駅(厚木線)まで直通で行くと言う極めて将来性のある路線である。

以上のことから、延伸計画をする際には周辺環境の人口増を見越して、最大本数ケースを想定した延伸計画が必要であると考える。

(了)

注釈

*1
本文は、東京大学大学院都市工学専攻にて発表した資料に加筆したものである。

*2
地下鉄7号線(埼玉高速鉄道線)延伸協議会 報告書

*3
同上

*4
大規模噴火時の広域降灰対策について―首都圏における降灰の影響と対策―~富士山噴火をモデルケースに~(報告)(令和2年4月7日公表)「別添資料3」


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